人生においてこれほどに私の心を動かす者はいない。
それは以前少しだけ語った。
なぜ“彼”は私の心を動かしたのか。
それは、“彼”があまりに傲慢だったからでも、非情な者だったからでもない。
むしろ、私は、“彼”にはある種の哀れみを抱いているのだ。
“彼”は、生まれ落ちた瞬間に、祝福と引き換えに悲劇を与えられた。
最愛の母を失い、父からの愛情を一身に受けるつもりが、再婚し、異母兄弟ができた。
もともと意志が強く、自分のしたいと思うことはなんでも通す性質だったのだろうが、いわゆる“邪魔者”が入り、それはさらに頑なになったに違いない。
だが、決してずっと孤独だったわけではない。愛する人を得、七人の息子にも恵まれた。
しかし、父の死と“至高の宝玉”を奪われることで、その心は再び狂気に満たされてしまった。
そして、非業の死を遂げた“彼”。
その人生は、常に内に燃えさかる炎と共にあったと思う。
“彼”の行いは決して許されることではない。それはいずれ詳しく話をしたいが。
だが、それでも願わずにはいられない。どうにかならなかったのかと。
私は、この語りを通して、“彼”に救いがあったかどうかを見出したい。
長い付き合いになるが、それもまた一興である。
そんな“彼”の名は、父名を「クルフィンウェ」、最もよく知られる母名は「フェアナーロ」、すなわち「フェアノール」と呼ぶ。




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