念願の「指輪物語」による論文作成が見えてきたところで、私は教授に自らの考えを伝えた。
どういう方向性で進めたいのかを。
当初は指輪について、種族について、神についてなど、いろいろと盛り込みたいことを伝えていた。
しかし、論文であるからには、どれか一つに搾るのがいいとの助言をいただいた。
その中で、最もあなたが求めたいことは種族のことではないかと、教授から核心を突かれた時、一瞬自分がこの題材を選んだことを後悔した。
種族のことを語れば語るほど、その深みがどれほど深く果てしないものなのか、なんとなく想像できていたからである。
そのうえ、種族に特化して論文を作成するなど、いくら時間があっても足りないことはわかっていた。
その予感は見事に的中した。
論文作成に取りかかるやいなや、私は図書館に入り浸るようになった。
大学のみならず、地域の図書館、果ては書店や国立国会図書館に至るまで、ありとあらゆる文献を読み漁った。
そうでもしなければ、多くの種族を理解するには至らないと考えたからである。
とはいえ、その時間が苦痛だったかと言われればそうではない。
むしろ楽しくて仕方がなかった。
おそらく、これまでの人生の中で最も楽しかった時期とも言える。
だからこそ、多くの困難を乗り越えられた。指輪を棄却する彼らの旅路を思い出しながら。
その努力の甲斐あって、論文は完成した。
達成感に浸っていると、さらに驚くことがあった。
思いがけず、その論文は評価され、表彰という形で返ってきた。
私の中で燃え続けていた『指輪物語』が、外の世界にそっと触れた瞬間だった。
ここで、私の「指輪物語」の探究は一応の終息をみた。
しかし、探究心の燻りはまだ終わっていない。
今はあの頃のように深淵へ飛び込むのではなく、その火を静かに守ることを選んでいるのだ。



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