ゴンドールに迎えられた彼は、エレスサール王をはじめとした多くの人間から、“英雄”と讃えられた。
大いなる使命を負い、それを“成し遂げた”者として。
そう、捉えた人も多いはず。
だが、彼は、フロド・バギンズは、そんな大それた人物ではない。
むしろ、ごく普通のホビットだ。
ただ自分のおじ、ビルボが、あの忌まわしき指輪を手にしたこと、そして自分がそれを受け継いだだけのことだった。
戦う力もない。少し頭はよくても、ビルボほど機転が利くわけでもない。
ただ、運命に翻弄されただけなのだ。
それに、彼は使命を“達成していない”。
あの滅びの山の亀裂で、彼は欲望に負けた。
あの時、ゴクリがいなければ、サムがいなければ、指輪は再び世界をさまよい、サウロンはそれを執拗に追い続けたはずだ。
フロドは敗者だった。そして、ほんの少し歯車が違っていれば、世界の脅威になっていた可能性すらある。
とはいえ、そんな彼を、誰が責められようか。
誰をも魅了し、醜い心を呼び起こすあの指輪を、たとえ棄却できなかったとしても。
もしいるとするなら、それはよほどの聖人君子のはずで、そんな人がこの世にいるのかと私は疑問に思う。
フロドはただ運命の歯車に巻き込まれ、どうにもならなくなっただけのこと。
それゆえに、彼が最後に選んだのは、中つ国を自らの意志で去ることだったのだろう。
彼の心と体に深く刻まれた多くの傷は、運命に翻弄されたために出来たもの。
彼はもう疲れてしまったのだ。
だが、忘れてはならない。
彼は西方へ旅立つその時、決して苦しみも悲しみもしなかった。
それが、彼が出した、彼の人生の答えだ。



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