そもそも、私が語り部になったら絶対に語りたい人物がいた。
それは、闇の森の王の息子で、旅の仲間としてフロドを支えた者の一人。
彼の名はレゴラス。緑葉の名に相応しいしなやかな身のこなしと美しさは、映画を見た私を虜にした。
そう、彼が指輪物語の世界にはまり込んでいくきっかけを作ったのだ。
しかし、私の中で指輪物語が大きくなるにつれて、ただの美しいエルフの王子の位置づけは変わっていった。
というのも、彼はなにかにつけてギムリと競争をする。
オーク退治の数、酒飲み比べ。そして、ファンゴルンの森に行くか燦光洞に行くか。
確かに、彼の強さは作中でのオークを倒した数で充分に伝わる。
王子様ならではのわがままな一面も見受けられるが、それも想像の範疇内だ。
ただ、彼は人間ではない。高貴なエルフである。
美しく気高くそして賢くあるはずのエルフとは少し違った一面が、レゴラスには随所に見られるのだ。
そこで私は考えた。
彼は頭で考えることが苦手なのではないかと。
事実、エオメル率いる軍勢に囲まれた時、ギムリを罵った彼に対し、レゴラスは弓を構えた。
友達思いだと思えばそこまでだ。
しかし、この後アラゴルンが双方を諫めなければ、お互いどうなっていたかわからない。
そんなことも考えず、怒りにまかせて攻撃しようとするレゴラス。
彼は熟慮するよりも、心が先に走る。ゆえに、その姿勢は旅の中で大きく活かされたと言える。
そしてもう一つ。
彼がただの高貴で賢いエルフの王子だったとしたら、そもそも指輪棄却の旅に同行していたかというのも怪しい。
あの旅は危険極まりないと誰もが分かっていたから、賢く生きるなら行かない道を選ぶはず。
そうすれば、当然ギムリとの友情は育めなかったし、旅を終えてエレスサール王の側で暮らすこともなかっただろう。
そして、アマンへドワーフを連れて行くなどという、エルフ史上最もありえない、だが種族の垣根を越えた素晴らしい行動はしなかっただろう。


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