中つ国の中で、もし「ここに住め」と言われたら、私は迷わずホビット庄(シャイア)を選ぶと思う。
ゆっくり畑仕事をして、ゆっくり好きなことをして、ゆっくりご飯を食べて、ゆっくり眠る。
あの暮らしには、急ぐ理由がほとんどない。
真面目すぎず、でも怠けすぎず。
大きなことはしないけれど、日々をきちんと楽しんでいる。
ホビットの「ほどほどさ」は、子どもの頃より、今の方がずっと魅力的に見える。
さすがに一日六食は多すぎると思うけれど。
あれはもう、憧れというより才能だ。
背が低いのも、少しうらやましい。
私はどちらかというと背が高い方なので、あの目線で世界を見る感覚は、一度味わってみたい気がする。
――つまり、田舎暮らしに憧れているのか。
そう聞かれると、少し困る。
虫は、正直かなり苦手だ。
畑仕事にも、多分、向いてはいない。
それでもなお、ホビットの暮らしに惹かれるのは、「何をしないか」をちゃんと選んでいるところなのだと思う。
世界を救わなくてもいい。
偉業を成し遂げなくてもいい。
ただ、今日を無事に終えて、お腹が満たされて、安心して眠れれば、それでいい。
そんな価値観が、物語の片隅に、当たり前のように存在していることが、私はずっと好きなのだ。



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