父として、王として―フィンウェの胸中

フィンウェの悲しみ 深淵を語る

フェアノールの幼少期の別れ、そして父も母も両方“うしなう”という経験は、その後の彼の人生に大きな影を落とした。

ただ、うしなった経験をしたのは彼だけではない。

彼の父、フィンウェもまた、最愛の妻を喪っている。

そして、そのことは、フィンウェの心にも影を落とした。

しばらくはローリエンの庭を訪れていたフィンウェだったが、生きている息子を育てることに全力を注ぐようになった。

それは間違いなく、父親としての責務がそうさせたのだろう。

だが、彼はしばらくしてインディスを娶った。そして、子をもうけた。

フェアノールにとってこれが、父をうしなった瞬間であることは、以前語ったとおりだ

だが、これはフィンウェにとっては、苦渋の決断だったのか、あるいは私欲のためだったのか。

どこかで聞いたことがあるのだが、エルフはたった一人の男性あるいは女性を愛するということになっているという。

永遠の命を生きるエルフにとって、夫婦の離別などあり得ない話なのだろう。

しかし、フィンウェは数奇な運命を辿り、愛する人との別れを経験した。

ヴァラールの許しを乞い、特例として再婚が認められたとのことだ。
※伝え聞いた話のため、いささか違う部分があるかもしれない。

何故そうしたのか。

ミーリエルを喪った悲しみに耐えられなかったのか、あるいは―。

私は、彼が父であることと同時に、「王」であったことが関係するとみている。

王である以上、世継ぎの存在は重い。

それがエルフであろうと人間であろうと変わらない。

一人より二人、二人より三人――、そう考えてしまうのも、王の業なのだろう。

決してフェアノールをないがしろにしたわけではない。

むしろ、フェアノールが大切だからこそ、王位継承権のある子をなるべく多く遺したかったに違いない。

結果として、フィンウェは3人の男子に恵まれたのだ。

もっとも、それが本当に正しかったのかと言えば、断定することは難しい。

フィンウェ王家に訪れた不穏な影を思えば然りである。

ただ、フィンウェとフェアノール、二人の思いがすれ違いさえせず、どこかでぶつかり合っていたとしたら―。

私は、二人のことを読む時、いつも悲しい気持ちに襲われるのである。

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