ところで、今までの語りを読んだ人はこう思うだろう。
そもそも“私”はどうして“語り部”になったのか、と。
確かに、これはまだ語っていないところだった。
そろそろ私の過去を紐解いてもいいだろう。
もう20年以上も前のこと、私の心に衝撃的なものが走った。
それは、とある映画が公開されたこと。
-『ロード・オブ・ザ・リング』である。
神話やファンタジーが好きな私は、そのポスターを見てピンと来た。
これは私に刺さるぞ、と。
そもそもなぜ神話が好きなのか。
神秘性や物語の特異性に惹かれたのはもちろんだが、なによりも「人間くささ」が垣間見えるのが魅力的なのだ。
神は人間以上の、最高位に位置する存在のはずなのに、多くの女性に恋い焦がれたり、嫉妬したり、怒りにまかせて感情を爆発させたりと、まるで人間と変わらない思考の持ち主である。
彼らの中にある人間くささは、私の心をグッとつかんで離さなかった。
予想通り、第1作目を見終えた私は、その世界に魅了された。
そして、すぐに書店へ走った。
なにがなんでもこの映画の原作を読んでみたい。
図書館で借りるなどという選択肢はなかった。
貸出期間内に読み終わるとは到底思えない代物だとは、映画を見た時点でわかりきっていたからだ。
とりあえず最初の1冊目を購入した。
そこで少し度肝を抜かれた。
なにせ、一つの種族について何ページにもわたって説明されているからだ。
これは読み飛ばしてもよかったのではないかと気づいたのは、その数年後のことである。
とはいえ、原作は素晴らしかった。
淡々と語っている、余計な感情表現や余韻のようなものは全くないのに、どうしてここまで引き込まれるのか。
当時はその理由がよくわからなかったが、ここに、トールキン卿の偉大さを痛感した。
以上が、語り部になる前の始まりのところである。
ここから少し長くなるかもしれないが、お付き合い願いたい。



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