さて、『指輪物語』を読み始めた私が、果たしてすんなりと原作の虜になったかというと、実はそうではない。
そもそも私は、この物語のはじまりからつまづいてしまったのだ。
最初に語ったことにもあるように、この作品は冒頭で、ある種族の話を延々と語っている。
それは、指輪物語の主役とも言えるホビットだ。
彼らの身体的特徴、暮らしぶり、歴史など、ある程度のことは冒頭に書き連なっている。
しかし、何故ここまで語る必要があるのだろうかと、当時の私は疑問でならなかった。
早く物語を読ませてくれ、と何度思ったかわからない。
これまでのファンタジー小説ですら、物語の途中ではよくあることでも、冒頭から説明を長々とすることはなかったのに。
イライラしながらもようやく読み終えた時は、一種の達成感があったものだ。
この真意に少し近づいたのは、ごく最近のことである。
トールキンの語り口は、出来事を淡々と述べるにとどまり、登場人物の感情を過剰に説明することはない。
これが、原作の世界にハマり始めた人達の心を鷲掴みにするのだと思われる。
しかし、主役のホビットの説明なくして語るには、あまりに情報が足りない気がする。
もしかすると、あの長い語りは、物語の土台を築くためのものだったのかもしれない。
ホビットという存在を知ることは、後に彼らがどれほど世界から逸脱していくのかを知るための準備だったのではないか。
だから、冒頭に持ってくることにした。それが自然な流れだ。
とはいえ、「指輪物語」を読み進めれば、ホビットの性質は自ずとわかってくるもの。
あえて説明をする必要など、なかったはずなのだ。
それでも卿がホビットを余すことなく語りたかったのには、何か他に理由があると思わざるを得ない。
だが、その真の答えに辿り着くには、もう少しこの作品を紐解いていく必要がありそうだ。



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