あの指輪に惹かれた日

指輪の魔力 深淵を語る

もし手に入れられるならと願っていた「力の指輪」。

映画を見ていた子供の頃、私はあの指輪の飾らない美しさと、どこか神秘的な雰囲気に強く惹かれていた。

そう思ったのは私だけではない。中つ国に生きた多くの者たちが、この指輪に心を奪われた。

人間の王イシルドゥアにはじまり、ゴラム(スメアゴル)、ビルボ、そしてフロド。

しかし、それだけではない。

旅の仲間であり、道中でいなくなってしまったボロミア、彼もそうだった。

そして事実、指輪の誘惑に屈しそうになった者はさらにいる。

あのガンダルフですらそうだった。

とはいえ、指輪の恐ろしさは単に誰かを魅了するにとどまらない。

それは、主のサウロンの命をも預かるほどだった。

全てを統べる指輪は、あらゆる者を掌握する力を持っていたと言える。

だが、ここで一度立ち返ってみる。

指輪がもたらしたものは、それを手に入れんとするがゆえの混乱と諍い、そして破滅への道だったかもしれない。

しかし、「あれが欲しい」「これも欲しい」と望むことは、誰もが抱く自然の心の有り様だ。

欲求は、生き物の生存本能であり、同時に豊かに生きるために必要なものだ。

だからこそ、「指輪を手に入れたい」という気持ちは、指輪からの魔力に関係なく、誰しもが抱くものと言っても不思議ではない。

だが一つ忘れてはならないのは、人が人たる所以の部分ではないだろうか。

たとえそれを手に入れたいと望んでも、誰かを傷つけてまで手に入れる必要があるかと言われると、それは違う気がする。

指輪がもたらしていた欲望の魔力は、人を人でなくするほどのものがあったということだ。

もし指輪が本当に存在していたとしたら、かつて指輪を欲していた私も、人であることを忘れていたかもしれない。

そう考えると、指輪にも、そして何も知らなかったあの頃の私自身にも、少しだけ恐ろしさを感じてしまうのだ。

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