手放した先にあるもの

ビルボの執着 考察

様々なものに執着を抱くことは、時として己を明るい未来へと導き、また時として己を破滅に導く。

そうした執着を手に入れては手放していくことで、人生は進んでいくもののようにみえる。

おそらく、ビルボはそうだったと思う。

彼自身は若い頃、自分の穏やかな暮らしに満足していた。

しかし、ドワーフ達との冒険を経て、大きな世界を知り、探究することの意義を得た。

その後は、世界のすべてを知るために旅を続けた。

だが、彼の執着は決して世界の探究だけではなかった。

はなれ山奪還の道中、彼はゴラムからあるものを奪い取っていた。

あの、一つの指輪である。

それは長らくビルボの手の中にあり、彼の欲望を満たした。

それ故に、彼は歳を取らなくなった。

だが、指輪を捨て、フロドに託した後、彼は一気に老け込んでしまった。

そして、なおも指輪を求め続けた。

それは、不死の国へ赴くその時まで続いた。

醜い老人の姿になってしまっても。

こうしてみれば確かに、ビルボには破滅へと導く執着があった。

しかし、彼がそこに至らなかったのは、破滅への執着を一旦は手放したことにある。

これがまた少しでも掛け違えていれば、彼は二度と日の目を浴びなかったに違いない。

その結果、彼が奈落の底に落ちることはなかった。

代わりに得たのは、新たな世界への好奇心と冒険心だった。

不死の国へ向かう彼の目は、かつて世界を求めて旅をしていた頃の熱い輝きが取り戻された。

ビルボは、指輪という恐ろしい執着を持ちながら、それを葛藤しながらも手放した。

それは、彼の中にもう一つの輝かしい執着―世界への探究心があったからである。

とはいえ、今ある執着が希望への指標となるのか絶望への落とし穴となるのか、それを追い求めているうちはよくわからないものなのだろう。

むしろ、自分自身では気づきにくいところもある様な気がしている。

その執着が良いものだったか悪いものだったか、それを手放すことで初めて見えてくるものなのかもしれない。

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