白は淀みない色。汚れなき、澄んだ色。
それを帯びていたサルマンは、中つ国を見守る”イスタリ”の一人だった。
そして、イスタリの誰よりも強く、賢明で、ガンダルフにとっては良き相談相手だった。
もともとマイアだった彼は、イスタリとして中つ国に派遣されると、彼はその賢明なる素質を発揮し、民たちを側で見守ってきた。
当初はそうだった。
しかし、彼はサウロン側に着いて(実際はサウロン側に着いたふりをした)、画策を始めることになる。
サルマンは白を纏うのをやめた。
様々な色を織り込んだ布を纏い、「白は何色にでも染まる」と豪語した。
ただ、これにより、彼の威光は失われたと思われる。
白は汚れなき色。それゆえに汚れやすい色でもある。
彼の貪欲なまでの知識と力の渇望は、サウロンの力と知識量を前にして、彼の心にあるどす黒いものを揺さぶった。
同時に、同じように派遣されて信頼を得ていったガンダルフへの妬みも加わり、汚れなき色はどんどん汚れていった。
遂には、彼は色糸すら纏えず、かつて妬んでいたはずのガンダルフと同じ色を纏うことになった。
とはいえ、汚れた結果、完全な黒にならなかったことは、私の中でも一つの疑問である。
汚れは汚れるほど、黒に近くなるのではないか。
そう思ったが、サルマンが辿ろうとした道は案外そうでもないらしい。
彼はサウロン消滅後、ホビット庄を乗っ取ろうとして画策していたところ、帰還してきたフロド達と他のホビット達に行手を追われた。
だが結局、彼はフロドによって赦されたのだ。
本来なら処刑されて然りだが、フロドはサルマンを追放するに留めた。
つまり、サルマンには「やり直す」選択肢が与えられたのだ。
かつて、何色でもない色を纏っていたガンダルフは、中つ国の役割を明確に与えられ、白となった。
一方で、白であったサルマンは立場を見失った結果、灰色となった。
だが、ガンダルフと同様、役割を再び選び直す機会を得た。だから、黒ではなく、灰色だったのだ。
「灰色」、それは、人が選択を迫られる時に現れる、大事な色なのかもしれない。
結局サルマンは、せっかく与えられた機会を踏み躙ったために、その命を虚しくも終えることになってしまった。
かつての白が忘れられなかったのか、それとも灰から白になったガンダルフを恨み続けていたのか。
いずれにせよ、灰色である自分とどう向き合うか、それが自分の道を定める大事なプロセスなのではないだろうか。


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